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アトピー性皮膚炎を理解する 4

かゆみ物質

体の中からもさまざまな「かゆみ物質」が攻撃!
 アトピー性皮膚炎を理解する最後のキーワード。それは「かゆみ物質」です。
 というのも、アトピー性皮膚炎の強いかゆみには、「アレルギー反応が起こる仕組み」で解説したように、体内の細胞から放出される、さまざまな化学物質(かゆみ物質)も関係しているからです。
 代表的なかゆみ物質は「ヒスタミン」ですが、ヒスタミンとは関係なく起こる強いかゆみもあります。実際、かゆみを起こしているのではないかといわれる放出物質には、ニューロペプチド、オピオイド (βエンドルフィン)、サイトカインなど、ややこしい名前のものがたくさんあります。
 アトピー性皮膚炎ではこれらさまざまな物質が体の細胞を刺激、真皮の中で炎症が起こると考えられています。炎症部分は「熱さ」と「かゆさ」のダブルパンチ。体の中で起こる熱がゆさに、子どもは思わず手を出し、ポリポリかいてしまうわけです。

血が出るまでかくのはかゆみを感じる神経のせい
 また、アトピー性皮膚炎などによるドライスキンの人は、そうではない肌タイプの人より、かゆみを感じやすいのも特徴です。 体が察知した「かゆい」という感覚は、神経を通って大脳に伝わります。この 「かゆい」という感覚をやりとりする神経ネットワークの端っこは、真皮と表皮の境目にあります。
 たとえば皮膚に、かゆみを起こす薬を塗ったとしましょう。角層はかゆみをほとんど感じません。表皮では、ほんのちょっとのかゆみです。そして「かゆい!」といちばん強く感じるのは、神経が集まった、表皮と真皮の境目の部分です。
 アトピー性皮膚炎などによるドライスキンでは、なぜかはわかりませんが、この神経が角層のすぐ下まで伸びています。つまり皮膚のすぐ下で「かゆい!」と強く感じてしまうんですね。
 また、皮膚表面の刺激もすぐ神経に伝わってしまいます。寝ている間、血が出るまでポリポリかきむしってしまうのも無理はありません。

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アトピー性皮膚炎を理解する 3

混合反応

アトピー性皮膚炎は、異常の起きた皮膚とアレルギーの 「混合反応」
 皮膚のバリア機能の低下は、アレルギー体質でない人にも起こるトラブルです。ドライスキンも同様に、アレルギー体質でない人にもよく見られる肌タイプの一つです。実際、「アトピー性皮膚炎でしょうか」と心配して受診するお子さんの何割かは単なるドライスキン、つまりカサカサ肌タイプです。
 肌タイプでいえば、肌の「強さ」「弱さ」にも個人差があります。よだれや食べこぼしのふきすぎで口のまわりが真っ赤になる赤ちゃんはたくさんいますし、大人でも、ふきすぎで口のまわりがひりひりすることがあります。アレルギー体質でなくても、こうしたことはよく起こります。
 アトピー性皮膚炎は、これらとはまた違います。 アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能の低下やドライスキンなど「アレルギーに関係のない要因」と「アレルギーによる要因」、この2つが組み合わさって起こる、慢性の湿疹です。つまり「混合反応」ということです。「2つの側面」 「2つの顔」を持っていると表現してもいいでしょう。実際、アトピー性皮膚炎の患者さんの多くは、アレルギー体質(アトピー素因)を持ちます。
 しかし、この概念だけでアトピー性皮膚炎が説明できるかというと、そうでもありません。
 たとえば乳幼児期には食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎もよく見られますし、3~4才になると、アレルゲンとしてチリダニの影響も強くなります。大人ではストレスや心理的な問題がアトピー性皮膚炎を悪くさせる場合が多くあります。けれど、いくら調べても原因がはっきりしない場合も少なくありません。アトピー性皮膚炎の解明は、まだ始まったばかりといえるでしょう。

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アトピー性皮膚炎を理解する 2

ドライスキン

ドライスキンもアトピー性皮膚炎の特徴の一つ
 バリア機能の主役である角層には、たくさんの水分が含まれています。角層のいちばん上には「皮脂膜」があり、ここでもアレルギーを起こすものや病原菌などをシャットアウトします。また、皮脂膜は水分が抜けていくのも防ぎます。
 けれど、バリア機能が低下した角層、また、手でかくことなどによって傷ついた角層は、こうした保護機能が十分に働きません。アレルゲンが侵入しやすいだけでなく、水分も外に抜け出やすい状態です。
こうして水分が減ってカサカサになった肌を「ドライスキン」といいます。これも、アトピー性皮膚炎の特徴の一つです。
 また、水分が減ってしまうもう一つの理由に、角層の中の「セラミド」という物質が少なくなっていることもあげられます。セラミドは一種の脂で、ブロックのように積み重なった角層の細胞と細胞をつなげるのが役目。いってみればセメントです。それが少ないので、ブロックとブロックの間はスカスカ、水分をためておくことができません。アトピー性皮膚炎では皮膚炎の部分だけでなく体全体がドライスキンになりがちですが、これもセラミドの減少が一つの原因と考えられています。ただ、どうしてセラミドが減ってしまうのか、その仕組みはまだよくわかっていません。

ドライスキンは刺激にも敏感。ちょっとしたことでカユカユ!
 バリア機能が低下してカサカサになった皮膚は、健康な皮膚にくらべて刺激にも敏感です。たとえば汗、空気の乾燥、お湯のあたたかさ、せっけんやシャンプー、リンスに含まれる香料、洗剤の中の界面活性剤。
 健康な肌の子ならたいしたことのない刺激でも、アトピー性皮膚炎の子には大きな刺激。冬など空気が乾燥する季節になると症状が悪化しがちなのもそのためですし、おふろで体があたたまるとかゆみが増してしまうのも同じです。
 かゆいからかく、かくことでよけい角層が傷つき、水分が抜けてカサカサになる。アトピー性皮膚炎では、こうした悪循環がよく起こってしまいます。

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アトピー性皮膚炎を理解する 1

バリア機能

皮膚の役目は人間の体を守る機能
 アトピー性皮膚炎を理解するために、まず必要なこと。それは、皮膚で「何が」起きているかを知ることです。「なぜ」そうした症状が起きるのか、アレルギー体質とどのような関係にあるのかは、のちほどゆっくりお話ししていきます。
 それでは、アトピー性皮膚炎を理解する第1のキーワード「バリア機能」について説明しましょう。
 ふだんは意識することもない皮膚ですが、そこにはとても大切な役割があります。
 たとえば熱い、冷たい、痛い、重いなどを感じるの
も皮膚の役目です。「アチチ」と感じて手を引っ込めるから、ひどいやけどをしなくてすむのです。「やわらかい」「かたい」なども、皮膚を通して脳に伝わります。
 同時に、皮膚は人間の体に欠かせない水分が外に抜け出ていかないよう、守っています。
 そして、なにより大事なのが「バリア機能」。細菌やウイルスなど有害なものを体に侵入させないよう、ガードすることです。
 体内環境をいつも一定にすこやかに保つため、全身を包んでガードする、それが皮膚の役目です。

バリア機能の主役はいちばん上の「角層」
 皮膚は、次ページのイラストのように「表皮」「真皮」と呼ばれる部分に分かれます。
「表皮」は何層もの細胞が、ちょうどお城の石垣のようにブロック状に積み重なっています。いちばん下には「皮膚のもと」になる細胞があり、それが分裂して上っていきます。表皮のいちばん上には角層があり、皮膚はそこから表面に達し、あかとなってはがれ落ちていきます。よくいわれる「お肌のサイクル」ですね。
 でも、角層は「もういらない古くなった部分」「あか」ではありません。実はこの角層こそがバリア機能の中心、ガードの主役です。
 細胞の集合体なので、タオルなどで強くこするとあかや汚れといっしょにどんどん取れていきますが、そんなふうに無理にこすって取ってはいけない、とても大事な部分なのです。

「バリア機能の低下」がアトピー性皮膚炎の特徴
 アトピー性皮膚炎の特徴は、ひと言でいえば、この皮膚のバリア機能の低下です。ガードの主役である角層に、異常が起きているのです。健康な皮膚であれば、角層はとても強固で、ちょっとやそっとの病原菌ならはね返します。ところが、アトピー性皮膚炎では角層のバリア機能が低下したり、うまく働かなくなっています。そのため、細菌やウイルスはもちろん、アレルゲンも体内に侵入しやすい状態になります。
 もともと赤ちゃんや子どもはいろいろな臓器の機能が未成熟ですが、とりわけ皮膚のバリア機能は未熟です。黄色ブドウ球菌(とびひの原因菌)など、大人にはなんでもない菌に感染しやすいのも、一つはこれが原因です。赤ちゃんや子どものアトピー性皮膚炎には、そもそもこうした「バリア機能の未熟さ」が関係しているのでは、とも考えられています。

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アレルギーの仕組みを知る 3

なぜ反応が出るかわからないこともある

思い当たる原因はあるのに血液中にはそれに対する抗体が見つからない
 また、アレルギー反応にはもう一つ、不可思議なことがあります。
 それは、出てきた症状がアレルギー反応によるものということはわかっていても、「なぜ」そうした反応が起きたのかよくわからないことがある、という点です。
 たとえば、異物が体に侵入してすぐにアレルギー症状が出るタイプは「即時型」と呼ばれます。アレルギ一反応としてはいちばんよくあるもので、スギ花粉によって鼻や目に症状が出たり、かになど特定のものを食べたり、特定のものに触れたらバーッとじんましんが出たなどは、このタイプです(じんましんもアレルギーの一種です)。早ければ10~15分、極端なときは数秒で反応が出ます。
 ところが、かにによるじんましんなどの場合、すぐ症状が出た人の8割くらいは、血液検査をすると「かにへの抗体」が見つかりますが、残りの人は抗体が見つかりません。血液の中の抗体の有無とアレルギー症状が、必ずしも一致しないのです。
 また、特定の物質侵入後、半日、または1~2日たってからアレルギー反応が出ることもあります。この場合、その物質に対しての抗体が見つからない人は、「すぐ反応が出た人」より多くなります。

時間がたってから反応が出ることも……
 このほか、ピアスやネックレス、時計のバンド、新しい化粧品などで皮膚が赤くなったり、かぶれたりすることがあります。これは接触皮膚炎(または皮膚アレルギー)といって、やはり特定のものに対するアレルギー反応ですが、この場合、直接触れた場所に症状が出るだけでなく、時間がたってから遠く離れた場所に反応が出ることもあります。薬を飲んだら1~2日たって発疹(薬疹)が出てきた、などもこのタイプ。時間がたっているだけに、アレルギー反応と気づかなかったりすることさえあります。
 アレルギー反応を起こす仕組みは意外に複雑で、まだまだわかっていないことも多いのです。

アレルギー体質は氷山の「隠れた下の部分」
 簡単にいえば、アレルギー体質は、海に隠れた氷山の下の部分です。体質として持ってはいても、症状が強く出ないために気づかない人もいます。大人になって花粉症が出て、初めて自分がアレルギー体質だったと気づくこともよくあります。
 また、アレルギー反応を起こさずにすむ環境があれば、氷山は海に隠れたまま……、つまり症状が表に出ないこともあります。たとえばスギ花粉症の人が南極で生活すれば、スギの木がないので花粉症の症状は出ません。
 逆に、なんらかの環境因子(アレルギーを起こすもの)が、次々にアレルギー病を引き起こすこともあります。アレルギー病は、体質と環境要因(日常生活の中にあるアレルゲン)が合わさって起こる、複雑な病気だと考えてください。

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アレルギーの仕組みを知る 2

アレルギーは遺伝による「体質」

アレルギー体質は親から子に伝わります
 でも、どうしてある人にはなんでもないものが、別の人にはアレルギー反応を起こしてしまうのでしょう。
 答えは「体質」です。アレルギーを起こしやすい体質が、親から子へ遺伝するのです。
 事実、アトピー性皮膚炎やゼンソクなどの子の両親を調べると、なんらかのアレルギー病(アレルギー性鼻炎、じんましん、花粉症、薬アレルギー、気管支ゼンソクなど)が見られることは珍しくありません。
 過去70年間の報告を見てみても、両親がアレルギー病を持っていると、片方の親のみアレルギー病がある場合にくらべ、約2倍の確率で子どもにアレルギー症状が出ることも明らかになっています。
 別の報告では、両親がアレルギー病を持つ場合、40~70%の子にアレルギーが見られ、片方の親のみアレルギー病の子は、生後1才半までに40%がなんらかのアレルギーの病気を持つともいわれています。

体質だから必ずアレルギー病になる?そうではありません
 では、アレルギー体質を持って生まれた子やアレルギー体質を持つ大人は、必ずアレルギー病を起こしてしまうのでしょうか。いいえ、そうではありません。
 たとえば双子のきょうだいの、ゼンソク発症に関するデータを見てみましょう。一つの受精卵から分かれた一卵性の双子ちゃんは、遺伝情報も同じです。ところがこのきょうだい、2人ともにゼンソクが発症するのは、世界のどの統計でも50~60%くらいです。アレルギー体質は遺伝子に組み込まれていますから、同じ「アレルギー体皆こを持って生まれた双子ちゃんなら、アレルギー病の発症率も、100%一致するはずです。でも、そうなりません。
 つまり、アレルギー病が発症する・しないは、遺伝だけでは解明できないということです。アレルギー病は体質と環境要因(日常生活にあるアレルゲン、食事など)も複雑にからんだ病気なのです。

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